晴天率の高さや昼夜の寒暖差といった自然条件に恵まれた東御市。その土地で育まれてきたワインは、多くの生産者や市民の関わりによって支えられてきました。市内でワインセミナーを開催する等、ワイン文化の醸成に取り組んでいる東御市ワインアンバサダーの大澤明彦さんと大山江利子さんに、これまでのワイン振興の歩みと、ワイン&ビアミュージアムの役割、そしてこれからのとうみワインの未来について語り合っていただきました。

Q.これまでの東御市のワイン振興を振り返ってみると、ワインの背景にあるテロワールなど、さまざまな要素がありますよね。
大澤さん(以下大澤)そうですね。まずはワインブドウのことを言えば、東御市の日照量はいいと思います。ブドウを育てる畑の斜面は、作業もしやすい角度でちょうどいいです。雨の被害なども、大きな被害は聞かないですね。総合的に好条件が揃っていると思います。
大山さん:(以下大山)どこもいい条件が揃っていますよね。東御市だけでなく、小諸市や上田市も同じようなテロワールだと思います。その中で、アルカンヴィーニュの存在も大きいですよね。ワインブドウを栽培する人と、醸造する人がつながる場所。私は生産者さんのワイン会に参加したことがあるのですが、それぞれワインに対する思いを持ってる方ばかりじゃないですか。そんなお話を聞きながらワインを飲んでいた時「このまちは本当にすごいな」と感じました。
大澤生産者さんにはそれぞれ感銘を受けたワインがあって「こういうのが作りたい!」という思いがありますね。アルカンヴィーニュには千曲川ワインアカデミーがあるじゃないですか。ワイン作りに興味を持った人が勉強できる場所というのも貴重です。東御市でワインを作り始めた先駆者の玉村豊男さんはすごいですね。やれることは全てやってきた方だと思います。国内外のワインコンクールに出したり。
大山その話は聞いたことがあります。日本でワインを作っていることがまだあまり認知されず、もちろん東御市のワインも知られていなかった時に「知ってもらうにはコンクールに出して、賞をもらうことだ」と。そうすれば「ここに美味しいワインがある」と知ってもらえる。だから積極的にやってきたそうです。
大澤これから何をするのかも、楽しみですよね。
大山そうですね。あと、私は玉村さんの後を担ってくれる人にも期待したいと思っています。

Q.東御市にはワイン&ビアミュージアムがあります。今回リニューアルするワイン&ビアミュージアムですが、これまでの役割と、今後への期待を教えてください。
大山私は地域おこし協力隊として東御市に来て、ワイン&ビアミュージアム(東御市の温浴施設「湯楽里館」2階)でコンシェルジュとして働いていました。当初は店内での飲食のみで、ワイン購入は下の売店(湯楽里館の売店)のみでした。だから買って帰る人が少なかったんです。本当にもったいなかった。「美味しいから買って帰る」という方に買ってもらいたくて、ここで販売ができるようにしてもらいました。それからは、少しずつ口コミも広がって、地元の方にもこの場所が認知されるようになりました。買いに来てくれる人も増えたと思います。
大澤その場で買えないと、短い距離の移動でも、その間に「やっぱり買わなくてもいいか」ってなっちゃうんですよね。販売できるようにしたり、広報活動だったり、ご苦労もあったんじゃないですか。
大山もうひたすら「ここで販売したい」と訴え続けただけです(笑)実際に「ここで買えたら」というお客様の声もあったので、そういったことも伝えました。時間はかかりましたが、叶ってよかったです。
大澤地道に積み上げてきたんですね。今後はさらに機能強化されるということで、デジタル技術が入るそうですね。やはりお酒なので、交通や宿泊は悩むポイントになると思います。ここに来れば、ニーズに応じてツアーが組めるようなシステムがあるといいですよね。宿泊も含めて、どのように回ったらいいか、交通手段はどうしたらいいか。宿泊予約までここでできれば、もっと良くなるんじゃないかな、と思います。
大山まさにワイン・ツーリズムの拠点という感じですね。あとは、ワイナリーさんとの連携ができたら、生産者さんともつながりやすくなりますよね。来館者が、見学したいワイナリーを探して、アポイントまで取れたらスムーズになるかもしれません。
大澤ここに来れば、その日の過ごし方を相談できるっていう場所はいいですね。

Q.最後に、これからの東御市のワイン振興についてお聞かせください。ワインを通じた「とうみファン」の獲得や、これからの課題など。東御市ワインアンバサダーとしてのお気持ちなども教えていただけますか。
大澤課題としては、もっと住民の方に地元のワインを知ってもらうことですね。ワインを作っている人たちは、ワインが好きでワインに親しんでいる。比べてしまうと、市民の方はワインに親しんでいる方が少ない印象です。もっと気軽にワインを飲んでもらえるようにしていくのが、私たちの使命でもありますね。
大山そうですね。昔のお豆腐屋さんのように移動販売ができたら、と考えたことが何度もありました。夕飯の頃に自分の家の近くに「ワイン1杯○○円〜」って来たら「1杯なら」って気軽に飲みやすくなりませんか?法律などの問題があり、実現は難しいので残念です。
大澤そういう意味では、小諸の駅直結のお店「E’cuve(エキューブ) こもろ」のようなお店ができるのもいいですね。まずは地元のワインを口にする機会を増やせるようにしたいです。あとは後継者問題ですね。現役のワイナリーさんはみんな創業者で、後継者が決まっているという方はほとんどいません。せっかくいいワインができても、何十年後には飲めなくなってしまう。そのために、安定して作れる「この地域の共通ワイン」みたいなものがあったらいいな、とは思っています。
大山ワイナリーオリジナルだけでなく、地域全体で一つの自分たちのブランドを作る感じですよね。
大澤そうです。それができて、安定的に流通するようになれば、その分だけでも安定的な収入を得ることができますから。ワイナリーを続けていくという現実的な面が見えてくると思います。
大山ファンを増やすという意味では、やはり地域振興が1番だと思います。今日のワインを作りたい人にはコアなファンが多いから、PRを必死にしなくても大丈夫だと思うんです。だけど、飲んでくれる人をさらに増やすには、ワインを日常に取り入れる仕掛けが必要です。そういったセミナーやイベントをもっとできたらいいですね。
大澤課題は色々あると思いますが、それはひとつずつ解決していく必要があると思います。そのために、第三者的な立場で関わること。イベントやセミナーを通じて、生産者と消費者の橋渡し的な役割ができるよう、これからも努めていきたいです。
大山私はワインアンバサダーなのでワインはもちろん軸にあります。ですが、もっと全体を知ってもらえることができたらいいと思います。仕事もツーリズムですし、もともと地域おこし協力隊であり、ガイドもやっていたので、地域全体の魅力を伝える人になって、お手伝いができたらいいなと思っています。

これまでも東御市はワイン&ビアミュージアムを拠点に、学びと発信を続けてきました。リニューアルに伴い、ワイン・ツーリズムの機能を高めるだけでなく、住民にも来訪者にも身近な「とうみワイン」を育てていきます。生産者と消費者をつなぐ場づくりはもちろん、ワインを日常に近づける取り組みを通して、産地の魅力を広げていきます。

大澤 明彦
埼玉県出身。佐久穂町立千曲病院外科医師。東御市民病院外科医師。2002年から国内外のワイン資格を取得。ブルゴーニュ利き酒騎士叙任。2024年2月から東御市ワインアンバサダーに就任。

大山 えりこ
三重県出身。JSA認定ワインソムリエ。複数の航空会社にてキャビンクルーとして勤務。2020年に東御市に移住。2025年3月まで東御市地域おこし協力隊、2025年4月から東御市ワインアンバサダーに就任。
